TFA2nd.2019  Step03 開催報告レポート

2019年10月14日 第3講義 開催報告レポート
TFA2nd.第3講義 テーマ「女性が生み出すソーシャル・インパクト」
講師  大崎 麻子氏

講師の大崎麻子先生は元国連開発計画職員としてジェンダー平等と女性のエンパワーメントを担当され、世界各地で女子教育、女性の雇用・企業支援、政治参加の促進等、重要なプロジェクトを数多く手掛けられました。

第3講義では、大崎先生の豊富な経験と貴重なお話を拝聴し、地域社会や経済、政治分野における女性の社会参画により、生み出されるソーシャルインパクトについて学びました。世界に視野を広げることで、今の自分のキャリアや能力をどのように社会の中で活かし、貢献するのか、セカンドステージでの自己実現と持続可能な社会・経済について考える機会となりました。

国内外におけるジェンダー問題に真正面から向き合い、第一線でご活躍されている日本のジェンダー専門家 大崎先生のご講義を徳島の地で受講できる素晴らしい機会にTFAのカリキュラムの奥深さを改めて感じ入りました。

大崎先生は3つの柱を軸に詳しく分かりやすく解説され、さらにワークシートを用いて受講生自身の将来を考えるきっかけをくださいました。3時間たっぷりの講義は大崎先生の膨大な情報量と深い知識、豊富な経験、使命感に圧倒されながらも、自分の思考力を鍛えられるものでした。その濃厚さに受講生もスタッフも理解、吸収しようと一生懸命、耳を澄まし、メモを走らせた時間でした。まさに視座が高くなり、意識改革がなされた時間でもありました。

 

まず大崎先生は女性活躍について問題提議をされました。
女性活躍と言われているが、女性は皆、どこでも輝かないといけないのだろうか?

女性が社会で活躍し続けるためには環境が整わないといくら言っても無理。社会の枠組み、あるいは組織の中での意志決定の場に女性が男性と対等に参画できているのだろうか?

女性が活躍できる環境をベースからしっかりと作り上げていかなければならない。
これは国際社会における共通の理解である。グローバルスタンダードになるようにするためにはジェンダーの問題を解決していくことが必須である。
世界中の国、町、集合体、地域のコミュニティでの女性たちの草の根活動でボトムアップし、枠組みを作っていくこと。トップダウンとボトムアップがうまく融合されて暮らしやすい社会が生まれるのではなかろうか。

そのためには市民社会の中で集合体としてNPO・NGO等、草の根活動を行い、女性が声をあげ、アクションを起こしていくことが女性にとって暮らしやすい環境や法律が作られて、次世代へ繋がっていくことになる。しかし、理想と現実にギャップがある。
このギャップを解消するためにジェンダーの問題を解決していかなければと認識できました。

1 ジェンダー平等と女性とガールズのエンパワーメントの理解
まず、1つはジェンダー平等と女性とガールズのエンパワーメント。
大崎先生の学生時代の留学経験や途上国支援での経験を交えながらお話くださいました。さらにジェンダー平等、女性とガールズのエンパワーメントの定義をわかりやすく解説してくださり、漠然と捉えていたジェンダー平等、女性のエンパワーメントを理解できました。

・ジェンダー平等
男性と女性が等しく権利、機会、責任を持ち、意思決定にも対等に参画する。
・女性とガールズのエンパワーメント
人生や日常生活におけるあらゆる選択肢を自分の意思で選び取って生きていくための力をつけること。
男性と対等に意思決定に参加するために必要な力を身につけること。

エンパワーメントは女性自身の置かれている差別構造や抑圧されている要因に気づき、その状況を変革していく方法や知識を得て、自己決定力を回復・強化し、自信を身につけられるよう援助する理念。本来の権利や人格を保つために力を付与する(エンパワー)という考え方に沿って、教育や支援を行うこと。地位向上ではなく個々の内発的な力を発揮できるよう支援することである。

途上国支援では社会主義国では教育制度が行き届いているが、山岳やへき地地方では女子が学校へ来なくなる現象が見られたそうです。現地へ入り、調査して分かったことは家庭における女子の教育の重要性を理解するに至っていなかった。なぜならば、母親たちは学校へ行ったことが無かったのです。

根本的なベースを築くために生活に密着して母親のために識字教育を行い、知識を身につける支援に注力されたとのこと。学びの本質的な理解が母親たちの内面に蓄積され、我が子たちには自分よりいい人生を歩んでほしいと願いから、子どもたちを学校へ通わせるようになったそうです。

文字の読み書きができるようになれば、知識を得て、教養を深められる。すると、自分の意思で物事を判断、決定し、行動に移すことができ、パワーをつけることになる。

女性がエンパワーを持つようになると、自己実現のみでなく、地域、国は豊かになっていく。次世代が健康に育ち、経済レベルがアップする。つまり次世代への波及効果、持続効果が望まれるのであるとお話くださいました。

では、日本の取り組みはどうでしょうか?
今までの延長、枠組みの中でやらせようとしているのか?ちゃんと投資されているのか?女性が活躍できる土壌、環境整備が非常に重要であるとW20の取り組み等を交えて解説くださいました。だからこそ、女性が声をあげること、ボトムアップにより環境整備のために意識を変えて行動することが必要であると理解できました。

2 ソーシャルインパクト
女性が社会的影響力を備えるために視野を広く持つこと、時間軸・空間軸を広げることが重要であるとお話くださいました。

人生80年を1日の時間で表すと、自分は今、何時にいるのでしょう?
ワークシートを用いて、それぞれの時間軸を可視化しました。

10年前の自分、今の自分、10年後の自分、個人としての自分、社会の一員としての自分の在り方を考えてワークシートフレームの中に記入、グループ内でシェア。
皆さん、とても興味深く、和やかにシェアされていました。

ワークフレームは4つ。「有償の活動」「無償の活動」「ボランティア」「創造的な活動」このバランスはどう変わっていくのか、どう変わっていきたいのか?自分の内面との対話、思考力、ピジョン力が鍛えられます。

大崎先生は10年後、ますます変わっていくでしょうと解説。私たちが生きるこれからの時代は以下の4つがキーポイントとなると事例を紹介されました。
・グローバル化
・人口動態の変化(日本は超少子高齢化)
・気候変動
・技術革新

これらを踏まえて、2015年9月国連で行われた持続可能な開発サミットで掲げられた持続可能な開発目標(SDGs)について解説くださいました。
「続かない世界を、続く世界へ」世界を変えるための17の目標を道しるべに行動し、次世代へバトンタッチできるだろうか?バトンタッチするためには、今までのやり方、考え方を変えることが一番、重要であると説いてくださいました。

誰一人、取り残さない。全ての国が対象である。今までのやり方、考え方を「変革する」プロセス。みんなでやる。政府、地方自治体、民間企業、市民社会組織、一人ひとりの市民。ジェンダー主流化。ジェンダーの視点を全てのゴールに主流化させる。
意思決定は「男女半々」でやりましょう。

一人ひとりがワークとライフのバランスが取れる生活。組織の中で働いている人を辞めさせないように定着力を高めていくこと。定着させるための評価システムの見直しが必要。(キャリアパスの可視化ができているか)
広い視野を持つこと、考え方、やり方を変えていく意識改革こそ、持続可能な社会を作り出すことを学びました。

3 エンパワーメント
女性の視点から自然災害で被災された方々の避難所での問題点を皆で考えました。
ここにもジェンダーの問題に気づかされました。防災について関心を持ち、男女で一緒に考えることも大切なことです。避難所設営、備蓄等についても女性視点をもっと反映されるべきと思いました。日頃からのコミュニティとの関わり方も考えることも必要です。

これからのリーダーシップは変革をリードすることが求められます。今までは男性中心の視点からの方向性や決定事項が多くありました。しかし、これからは女性の視点を反映し、きめ細やかな新しい変化をしていくことが社会の中でより暮らしやすい環境を作ることに繋がると大崎先生は解説くださいました。
さらに自分で決めて、自分で行動するための4つのポイントを上げてくださいました。
・健康 ・教育 ・生計手段 ・参画
そして、受援力(助けを求める力)もこれからの時代は必要な力となるとお話くださいました。
また、映画「アナ雪」のレット・イット・ゴーの歌詞に込められたメッセージを紐解き、大崎先生は2つの意味を解説くださいました。
・自分を解放すること
・世界の周りのうるさい声を聞き流すこと
このようなメッセージが世界中の女性から共感を得られたのではないでしょうか?

さらに大崎先生ご自身からも4つのメッセージを私たちに贈ってくださいました。
・自分の「意思」を持つ
・自分で「決める」
・他の人たちの「力を借りる」
・周囲の声を「聞き流す」

そして、最後に私たちに質問されました。
・どんなソーシャルインパクトを皆さんは生み出したいですか?
・ひとりでできることは?
・みんなでできることは?
答えは受講生、お一人おひとりの胸の中に浮かんだことと思います。

たっぷり3時間。とても濃厚な深い学びの時間でした。
大崎先生の豊富な知識、膨大な情報を受講生もスタッフも自分自身の中に落とし込むのに少し時間が必要と思いますが、意識改革はもう既に始まっているのではないでしょうか?会場の皆さんの表情は真剣そのものでした。大崎先生の貴重なご講義で視野が広がり、大きな気づきを得られた様子です。

10年後の自分のライフバランスをどう作っていくのか?いろいろと考えたり、行動したりすること。まず第一歩は自分の自己肯定感やイメージ力を高め、意識改革に繋がると思いました。
女性視点からの社会参画、女性が暮らしやすく活躍できる環境を作り出すソーシャルインパクトが徳島に巻き起こることと思います。
大崎先生、貴重なご講義を本当にありがとうございました。
レポート 廣澤

*最後に、大崎麻子先生の御著書2冊をご紹介します。
女の子の幸福論とエンパワーメント 働くミレニアル女子が身に付けたい力
どちらも、徳島市立図書館で借りられます。

 

 

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